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海の花

白い花を一輪。
これは手向けだ。
人知れず殺され、忘れられていくお前への。

最初で、最後の。













未来と力のことを考えた時に、自分が殺した人間の事が浮かんだ。
あたしがあの時捕まらなかったのは、超常の力による殺人が結界によって歪められたせいだと気付いたのは最近。
なんて幸運なのだろうと、自分を祝福したものだ。

世の中にはこんな人間も存在する。
父親を殺して、何とも思わない自分のような人間が。

あの日から今日まで、清清しい気持ちで生きてきた。
だからこそ、誰にも言わなかったし、言う必要もなかった。これからもそうだろう。


だがこの超常の力に殺され、そして薄れてゆく抑制の力の中でも思い出されることのないお前を、今日だけは少し思い出してやろう。


そこらで摘んだ白い花。
名前はきっとあるのだろう。
でもあたしは知らない。知らなくて構わない。
知らない人間に手向けるには丁度良い。



丁寧に花弁をちぎって冬風に乗せたそれは、海の方へ流れ、何処へきえたかも知れない。
芽を出すでもない、実を結ぶでもない、遠く彷徨うわけでもない。
人知れず朽ちて消えてゆくのだろう。

あたしから、父親への、最初で最後の献花。
せわしなく寄せ返す波に作られる泡が花のようで、忌々しかった。
by zucker-k | 2013-01-05 02:04 | Super Shooter
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